旧「一言隻句」
No.4ある演奏会を終わって《「会話は基本的なコミュニケーション」》1995/01/14

−−今の演奏どう思う?
「よかったんと違う」

−−どういうとこが?
「音程悪くなかったし、よくハモってたし。みんなよくやってたんとちゃう」

−−?
「何か気に入らんのか」

−−何かだんだんさめていくような感じがしたんやけど………。
「そうかなぁ、オレそんな感じ受けへんかったけど。結構よかったやん」

−−お前はハモってたと言ったけど、オレぜんぜんハモってると思わなかったし、
みんな同じ顔、それも無表情な顔が結構多かって気持ち悪かったし、
何をしたかったのかわからへんかってん。
「また小難しいことゆうて。理屈が多いやっちゃな。××君も頑張ってたし、○ ○さんも綺麗かったしよかったやん」

−−そんな問題やないやろ。なんか今の演奏、オレスッキリせーへんねん。
「じゃぁ、どんなんやったら満足するねん?」

−−もっと一生懸命歌うっていうか、汗かいて歌って欲しいねんな。
みんなソロして人を唸らせるほどの実力じゃないんやから、できてるような顔しないで<精一杯やってます>、<私のできることは全てやってます>といった必死さというか、 誠意というか、そんなん感じられるような演奏がいいんやな。
「でもそれってアマチュアっぽいな」

−−!?、今の団体アマチュアやないの。
「まあそうやねんけどな」

−−この頃思うんやけど。昔からもそうやったかもしれんけど、アマチュアがすごく恐いモノ知らずになってきてると思うねん。それも傲慢にね。
「・・・・・・・・・」

−−さっきも言ったけど、今日の演奏はつまらんかったのに終わった時のみんなの表情や雰囲気がすごく誇らしげやし、華やかやし、晴れ晴れしてたし、お客さんも絶賛しているような拍手やったし、これってなんや一流の演奏会みたいやん。
「それでいいやん。ようわからんな。お前なにが言いたいんや!」

−−演奏の中身、それもどんな気持ちで歌っているか知りたいんや。声を出してるだけじゃなくて、どんな感情で声を出してるのかを<声>と<表情>で示して貰いたいや。
「ふうん、そうか」

−−今日みんな歌ってて楽しかったんやろかな?演奏会開くって、ほんとすごく緊張するやん。
人前に立ってみたいとか、舞台で目立ちたいといった事はそれなりに厳しい訓練や努力の成果だもんね。
小学校や中学校でやった発表会や学芸会に乗るときとは違うよね。
ある程度打ち込み、徹した結果でないとお客さんは満足せえへんじゃないのかな。
「そんなの難しいやん。専門家じゃないし、練習にそんな時間はかけられへんよ」

−−だから……<歌ってるのが楽しいんや><へたかもしれないけど一生懸命やってるやろ>といったことを示してもらいたいんや。
なんかみんな専門家のような顔してたで。
謙虚さとか、ひたむきさの中で楽しむなんてことは出来ないのかな。
「そんなん考えたこともなかったな。そんな厳しいこと言わんとみんなで楽しくやろうよ」

−−そこなんや。結局、舞台に上がった人も、それを聴いている人も緊張感がないねんな。いや緊張を持ちたくないんやろな。
「緊張しながら聴くなんてしんどいやん。批判しながら聴くやなんていややもん」

−−オレは今日の出演者を知らんけど、お前の友達はようけ出とったな。
「そうなんや。今日のチケットもその友達から買わされたんや」

−−そやから聴き方が甘くなってるんとちゃうか。いや、そもそも演奏なんてどうでもいいんやろ?
友達をみにいっただけなんやろ。
オレなんか知ってる人もおれへんから演奏を楽しみたかったし、人も演奏の表情を見ながら楽しみたかったんやと思う。
「なれ合ってると言いたいんか」

−−付き合いの延長なんやな。
「なれ合いの延長というわけか」

−−両方が<甘え>あってるんやろな。
「なんか演奏会に行くなんて頭痛いモンやな。そんなに考えながら聴かんといかんもんかな」

−−ホンモノを楽しみたいんや。
今日だけじゃなくて、明日も明後日もずうとずっと死ぬまで楽しみたいからいい加減にはしたくないだけなんや。
「そんなもんかな。なんかしんどい生き方やな」

−−その生き方が楽しいんやがな。
「????????????」



No.4 1995/01/14(ある演奏会を終わって《「会話は基本的なコミュニケーション」》)この項終わり


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