[ Prima Parte ]
Lasciate mi morire,
Lasciate mi morire!
E chi volete voi che mi conforte
In così dura sorte,
In così gran martire?
Lasciate mi morire.
[ Seconda Parte ]
O Teseo, o Teseo mio,
Sì che mio ti vo´ dir,
che mio pur sei,
Benchè t´involi, ahi crudo!
A gl´occhi miei.
Volgiti, Teseo mio,
Volgiti, Teseo, o Dio!
Volgiti in dietro a rimirar colei
Che lasciato ha per te
la patria e´l regno,
E´n queste arene ancora,
Cibo di fere dispietate e crude,
Lascierà l´ossa ignude.
O Teseo, o Teseo mio,
Se tu sapessi, o Dio!
Se tu sapessi, ohimè! come s´affanna
La povera Arianna,
Forse pentito
Rivolgeresti ancor la prora al lito.
Ma, con l´aure serene
Tu te ne vai felice, ed io qui piango;
A te prepara Atene
Liete pompe superbe, ed io rimango
Cibo di fere in solitarie arene.
Tu l´un e l´altro tuo vecchio parente
Stringerai lieto, ed io
Più non vedrovvi,
O madre, o padre mio.
[ Terza Parte ]
Dove, dove è la fede,
Che tanto mi giuravi?
Così ne l´alta sede
Tu mi ripon de gl´avi?
Son queste le corone,
Onde m´adorni il crine?
Questi gli scettri sono?
Questi le gemme e gl´ori?
Lasciarmi in abbandono
A fera che mi stracci e mi divori.
Ah Teseo, ah Teseo mio,
Lascierai tu morire,
In van piangendo, in van gridando aita,
La misera Arianna,
Ch´a te fidossi e ti die´ gloria e vita?
[ Quarta e ultima Parte ]
Ahi, che non pur risponde!
Ahi, che più d´aspe è sord´
A miei lamenti!
O nembi, o turbi, o venti
Sommergetelo voi dentro a quell´ onde!
Correte orchi e balene
E de le membr´ immonde
Empiete le voragini profonde!
Che parlo, ahi!
Che vaneggio,
Misera, ohimè! che chieggio?
O Teseo, o Teseo mio,
Non son, non son quell´ io,
Non son quell´ io che i feri detti sciolse:
Parlò l´affanno mio, parlò il dolore;
Parlò la lingua sì, ma non già il core.
(Ottavio Rinuccini)
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[第1部]
私を置きざりに、
死んでゆくのもどうぞお見捨てになって。
かくも辛いさだめ、
かくも酷(むご)い苦しみのなか、
わたしを慰めてくれる人など望めましようか。
私を死なせてください。
[第2部]
ああ、テゼオ、わがいとしのテゼオよ。
そう、「わが」テゼオと呼びたいの、
それでもあなたはわたしのものだと。
たとえあなたが、……ああ、残酷なかた、
あなたがわたしの前から姿を消した今でも。
振りむいて、いとしのテゼオ。
振りむいてよ、どうかお願いだから。
うしろを振りむいて、ここにいるこの女を
もういちどごらんなさい、あなたのために
祖国も王位も捨ててきて、
この浜辺に残され、残虐な野獣どもの餌食となり
いずれは裸の骨ばかりを残すこの女を、
振りむいてもういちどごらんなさい。
ああ、テゼオ、わがいとしのテゼオよ。
もしもあなたが、……ああ酷い!
もしもあなたが、……ああ、辛い!
このあわれなアリアンナが、いまどれほどに苦しんでいるか
もしもあなたが知ったなら、きっと後悔して、
船首をふたたび、この浜辺へと向けるはず。
でも、あなたは、おだやかな風にのって
幸せに去ってゆく。わたしはここで泣いているのに。
あなたのために、アテネでは立派で盛大な祝宴が
準備され、それにひきかえ、このわたしは
ひとけのない浜辺で、野獣どもの餌食に。
あなたは幸せに、老いたあなたの父を、そして母を
抱きしめ、そうしてこのわたしは、
ああ、お父様、お母様、もう二度と
おふたりにお目にかかることはないでしよう。
[第3部]
あれほどわたしに誓ってくれた
あの約束は、いったいどこへ行ったのでしよう。
あなたがわたしを座らせてくれるという先祖代代の
玉座とは、そう、こんなにも高貴なものなのね。
これが、わたしの髪を飾ってくださるという
あの約束の王冠だというわけなのね。
これが王笏(しゃく)だというのね、
そしてこれらが約束の宝石や黄金だと?
わたしを置きざりにして、わたしを引き裂き、むさぼる
野獣のもとに捨てていくなんて。
ああ、テゼオ、わたしのテゼオよ、
このあわれなアリアンナが、むなしく泣きながら、
むなしく救いを求めて叫びながら、
死んでゆくのを見捨てるつもりなの? あなたを信じて
名誉も生命もあなたに捧げた、このわたしだというのに。
[第4部/終結部]
……ああ、やっぱり答えてはくれないのね。
酷いひと、わたしの嘆きにたいしては、
蛇よりももっと冷酷なのね。
おお、雨雲よ、嵐よ、風よ、
あの男を、波のなかへと沈めてしまえ!
鯱(シャチ)よ、鯨よ、いそいで
海の深い底までも、あの男の
汚らわしい手足でいっぱいにするがいい!
……ああ、わたしったら……なんてことを。
熱に浮かされたように喋りちらして。
あわれなわたし! なんてことを望んでいるの?
ああ、テゼオ、いいえ違うの。わたしじゃないわ、今のは。
こんな酷い言葉を口にしたのは、わたしじゃないの。
今の言葉は苦しみのあまり、悲しみのあまりに、
言ってしまったのです、舌が勝手に………!
けっして本心からの言葉ではないのです。
(詞:オッタヴィオ・リヌッチーニ)
イタリア語指導・翻訳 : 大木 正
京都クラウディオ・モンテヴェルディ合唱団
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