第76回 定期演奏会

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モンテヴェルディ連続演奏シリーズ Vol. 76

 


     
◆ C. モンテヴェルディ  マドリガル集 より
《第4巻》 Ah, dolente partita  ああ、つらい別れ 
《第1巻》 Donna s'io miro voi  愛しい女<ひと>よ、あなたを見つめれば
《第4巻》 Quell'augellin che canta  あの歌う小鳥 
《第2巻》  Ti spontò l'ali, Amor, la donna mia   お前の羽根先を切ったのだ、愛の神よ、わが愛する女<ひと>が 
《第6巻》  Zefiro torna, e 'l bel tempo rimena   春風が戻り、爽やかな季節を連れてくる 
 
◆ T. L. de ビクトリア  聖金曜日のレスポンソリウム 
  Tamquam ad latronem  まるで強盗に対するかのように 
  Tenebrae factae sunt  暗闇となった 
  Animam meam dilectam  わたしは自らの愛する命を 
  Tradiderunt me  彼らはわたしを不敬な者たちの手に渡し 
  Iesum tradidit impius  邪まな男がイエスを引き渡した 
  Caligaverunt oculi mei  わたしの両眼は闇に覆われた 
 
◆ 藤嶋 美穂 混声合唱とピアノのための  樹の心
(詩: 高田 敏子 1. 樹氷   2. 雪    3. 樹の心
4. みかん  5. 美しいものについて
  〜 ア ン コ ー ル 〜
◆ 藤嶋 美穂  あさきよめ混声合唱とピアノのための あさきよめ より




指揮
ピアノ
合唱

: 當間 修一
: 木下 亜子
:京都クラウディオ・モンテヴェルディ合唱団

Flyer; the 76th Concert 【PDF版ファイルは、こちら】( 両面:3.8 MB )


【外部リンク】
《 別館ホール “今昔物語” 》


  • 日時 : 2025年 10月5日(日)
         開演 … 15時00分(開場 … 14時30分)

  • 会場:京都文化博物館 別館ホール
       京都市営地下鉄「烏丸御池」駅から 徒歩 約3分 

- 入場料 -
  《 前売券 》   《 当日券 》 
一般¥2,800 ¥3,000 
学生¥1,800 ¥2,000 
高校生以下¥  800 (前売と同額)




演奏にあたって     音楽監督・常任指揮者 当間修一 

いきなりですが、前回の定期演奏会で書いた「演奏にあたって」を再掲します。
読み直して、演奏する意図がこれ以上加える事無く全て言い切っています。

 ── 音楽が好きだけれど「合唱」は聴かない、という方が結構いらっしゃるようです。
言葉のない音楽、「音響」を好まれるのでしょう。その中でも「オーケストラ」は根強い支持を獲得しています。 言ってみれば、趣味嗜好の話ですから、音楽を楽しむ。それは声、楽器どちらでもよい話。ただ、私のよう に両方を指揮する人間にとってみれば「どうして?」と考えてしまいます。「言葉が付いている」音楽は疲れ ると聞いたことがあります。
理解できます。言葉の世界に疲れたから音楽の世界で癒やされたい、リフレッシュしたい。なのにまた言葉 を聞いて脳を働かさなければならない。「もういいや!」でしょうか。
しかし、です。確かな感覚として、言葉を伴って与えられる「感動」は楽器に依るソレを超えます。
右脳と左脳、音楽領域と言語領域。関連する脳の全ての領域が活発化する。
それが音楽から与えられる最高、最良の贈り物です。
第一ステージと第二ステージはラテン語。多くの方々は言葉でなく響きをお聴きになるかと想像します。
それを言葉を聴き取って頂くのが「合唱団」が目指すべき事。そのようにと練習を重ねました。言葉の意味 は判らないけれど、心に響く(歌い手の思いが伝わる)音楽を目指します。──

因みに今回の第一ステージはイタリア語、第二ステージがラテン語です。特にラテン語はイタリア語の基礎と成る言語でしたが、現代では死語になって一般の会話では使われることがありません。 しかし、キリスト教会では古代から活き活きと使われていましたし、その中でも名作「 T. L. de ビクトリア Tenebrae responsories 」では 見事に内容と音楽が一致した作品と成っています。

今回の第三ステージ 『藤嶋 美穂(詩: 高田 敏子) 混声合唱とピアノのための「樹の心」』では詩の内容に即した日本語の「瑞々しさ」を合唱団に求めました。
「京都クラウディオ ・モンテヴェルディ合唱団」が今求める音色と共に、その一端を味わって頂ければ嬉しく思います。

合唱は社会の縮図です。全てが現れています。どのようなものが見えてくるか、それはお聴きになってくださっている皆様の中に有ります。
団員たちの日頃の熱意に感謝です。その団員たちを影で支え、応援くださっている方々にも深く、深く感謝します。

この演奏会にお出で頂き、ありがとうございます。心より感謝申しあげます。
音楽の素晴らしさ、そのものが彼らの表情、演奏に表れますよう真摯に向き合う所存です。

作品解説は合唱団員が書いてくれました。
参考にしていただければと思います。


 

曲紹介

 C. モンテヴェルディ    マドリガル集 より
クラウディオ・モンテヴェルディは、ルネサンス音楽とバロック音楽の両方にかかる時代に活躍したイタリア の作曲家です。 1567年にクレモナで生まれ、1643年に 76歳でヴェネツイアで没しました。当時としては 長命で、彼の遺した作品は多彩。さまざまな側面をもち、かつ奥深い世界を持つ、とても魅力的な作曲家 です。ルネサンスの音楽様式を完成させつつ、オペラ『オルフェオ』を手がけ、オペラという新しい形式を生 み出し、バロック音楽の幕開けに大きく貢献しました。
イタリアではマドリガーレというイタリア語で書かれた多声の世俗歌曲が流行しました。(マドリガーレ: [英]マドリガル と同義)  モンテヴェルディは 1587年の《マドリガーレ集 第1巻》から 1630年頃の《第9巻》に至るまで、半世紀にわたり創作に情熱を注ぎました。 彼のマドリガーレ曲集は、ルネサンスのポリフォニー音楽からバロック音楽のモノディ様式への劇的な変遷を写し取るものとなっています。
今回は、初期の作品から始まり円熟の時期まで、幅広く5曲を選びました。
愛の歌です。イタリア語のリズム通りに見事に作曲されています。
おそらく、愛の掛け合い、恋の苦しさ、日常の言葉が詩に使われているのでしょう。女たちは井戸で洗濯をしながら、 “Ti spontò l'ali, Amor”(第2巻より)と掛け合い歌う。男たちは酒場で切々と “Ah, dolente partita”(第4巻より) と歌い、やんや拍手喝さいを浴びる。 イタリアの人たちの、そんな夢想の情景を、私はよく思い浮かべます。当時彼の音楽はあっという間に、ヨーロッパ中に流布したそうです。
どうぞ、モンテヴェルディの世界をお楽しみください。
(アルト 根石 享子)
 

 T. L. de ビクトリア   聖金曜日のレスポンソリウム 
キリスト教においては「聖週間」と呼ばれる特別な期間があり、イエスの受難、死、そして復活について振り 返り、心に深く刻む、とても大切な一週間です。
この「聖週間」の最後の 3 日間(聖木曜日、聖金曜日、聖土曜日)に行われる深夜から未明にかけての長 時間の礼拝。蝋燭を順に消し、最後は暗闇となることから “テネブレ(暗闇)” と呼ばれています。 今回演奏するのは、「聖金曜日」の礼拝の際に教会に集まった会衆が皆で歌う歌です。
イエスが “まるで盗賊のように”捕らえられ、亡くなるまでの「受難」を描いた作品です。
情景や心情の描写がメロディによって絵画のように表現され、それが重なり合うことで、怒りが滲んだ悲しみがまっすぐに、そして重厚的に伝わります。
作中のひとつひとつの場面・言葉がもつ意味、ひとりひとりの登場人物がもつ心、そして現代を生きる私たち自身が今だからこそ大切にしたいこと…。 ライヴだからこそ、皆さんと共有できることがきっとたくさんあるはずです。
(テノール 近藤 雪斗/笹川 馨)
 

 藤嶋 美穂     混声合唱とピアノのための 樹の心 
美しく幻想的な雪の情景からはじまるこの作品。高田敏子氏の “樹”に関連する5つの詩に藤嶋氏が作曲されました。2024年に組曲として全曲初演された、新しい作品です。
雄大な自然界の、静かな樹々。その中でうごめく生命力が、ダイナミックな抑揚をもつピアノ伴奏で表現されます。 作品が持つ、優しく温かな目は端正で素直な合唱で表現され、その目は「桜」や「みかん」の心を 見つめ、次第に「小鳥」「魚」、やがては自分自身の心を見つめなおします。
とても素敵な作品です。お楽しみ下さい。
(テノール 近藤 雪斗)