第74回 定期演奏会

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モンテヴェルディ連続演奏シリーズ Vol. 74

 


◆ C. モンテヴェルディ マドリガル集 第3巻 より( 三部作 )
   Vattene pur crudel  行っておしまい、ひどい人 
   Là tra 'l sangue e le morti  流血と死屍の中で 
   Poi ch'ella in sé tornò  彼女が我に返ると
 
◆ A. ブルックナー Weltliche Chormusik ( 世俗合唱曲集 )より
   Du bist wie eine Blume  きみは花のよう
   Herbstlied  秋の歌   (※)
   Im April  四月に   (※)
   Mitternacht  真夜中   (※)
   Träumen und Wachen  夢と目覚め (※)
  (※)曲集に収録された“混声合唱編曲版”を演奏します。
 
◆ 藤嶋 美穂 混声合唱組曲 あさきよめ
(作詩: 室生 犀星 ) 序 ─悲しめるもののために─、 老いたるえびのうた
子守唄、 五月、 あさきよめ
  〜 ア ン コ ー ル 〜
◆ A. ブルックナー
◆ C. モンテヴェルディ
 
  Locus iste
  Cantate Domino, canticum novum 
 




指揮
ピアノ
合唱

: 當間 修一
: 木下 亜子
:京都クラウディオ・モンテヴェルディ合唱団

Flyer; the 73rd Concert PDF版ファイルは、こちら( 両面:2.7 MB )


  • 日時 :2024年 9月8日(日)
        開演 … 15時00分(開場 … 14時30分)
     

  • 会場:京都文化博物館 別館ホール
       京都市営地下鉄「烏丸御池」駅から 徒歩 約3分 
     

- 入場料 -
  《 前売券 》   《 当日券 》 
一般¥2,800 ¥3,000 
学生¥1,800 ¥2,000 
高校生以下¥  800 (前売と同額)




演奏にあたって     音楽監督・常任指揮者 当間修一 

 演奏会に足をお運び頂きましたことを心から感謝申し上げます。地味な作曲家、クラウディオ・モンテヴェルディの名を冠した合唱団の活動にこれまでにも熱い声援を頂いてきました。長く活動が続いていますことも関心を持っていただけた故のことと、深くお礼を申し上げます。それなしには成し得なかったことだと思っています。
 クラウディオ・モンテヴェルディ、地味と書きましたが、しかしながら西洋音楽史上においては偉大な功績を残した作曲家です。簡潔にその音楽の特徴を述べれば、「劇的な感情を音楽化した作曲家」ということになります。それまでの宗教的合唱曲は伝統的に理論化された形式と和声によって響きを綴ってきたのですが、モンテヴェルディは革新的に自らの音楽的信念に従って曲を書きました。オペラの創始者としても知られているのですが、一見相容れない宗教曲と世俗音楽(それもオペラ)の仕切りを取り去ってしまい、そして成功した作曲家です。
 業績としては何作かのオペラとそして 大作「聖母マリアの夕べの祈り(晩課)」が知られているのですが、実は彼の音楽にとって重要な曲は「マドリガーレ」です。そこに音楽史の珠玉の作品が生まれ出ています。
 今日の曲はその中の一曲です。模倣様式を駆使しながらオペラのアリアの様に劇的要素を映し出します。本来ならばパート一人ずつでの演奏が想定されているのですが、少し苦慮しながらも合唱での演奏でお楽しみ頂こうと思います。 合唱団の腕の見せ所でしょう。

 A.ブルックナーは今年メモリアルイヤーとなる作曲家。生誕 200年記念となります。
 ブルックナーの作品は早くから私のレパートリーとなっています。交響曲が一般に知られていますが、彼の宗教合唱曲は素晴らしいです。これらは私の心をありのままに受け入れ、そして熱くします。そのような作品は稀です。きっと私と の相性が良いのでしょう。
 今日の演奏は宗教曲ではないのですが、作曲家の魅力が溢れている曲たちです。ブルックナー作品への導入の役を果たすのではないかとの思いで選曲しました。彼の作品は難しいというイメージがありますが、少しでも敷居を下げることに繋がれば嬉しく思います。

 藤嶋美穂「あさきよめ」は新進の作曲家として紹介しても良いでしょう。氏の作品はそう多くはないですが一曲、一曲が丁寧に作曲され、そして思いも十分に伝わってきます。私にとっては注目の作曲家の一人です。
 この「あさきよめ」は氏の代表作といっても良いでしょう。私もこの曲を通じて氏を知ることができました。室生犀星の世界がこのような曲となったことを喜びたいと思います。
 合唱団も好きなようです。その思いが今日の演奏にきっと表れると期待しています。

 此所、京都文化博物館での演奏はいつも楽しみとなっています。客席との距離が近く、それでいて天井の高さ、木材の空間は音楽を優しく、温かく包んでくれているようでいつも気持ちが豊かになっていくのを感じます。
 今日の演奏の時間がお出で下さった皆様にとっても憩いと、充実の時間となりますよう指揮させて頂きます。
 

曲紹介

C. モンテヴェルディ 「マドリガル集」第3巻 より
 モンテヴェルディ連続演奏シリーズ、今回はマドリガーレ集第3巻より、“Vattene pur, crudel”、“Là tra 'l sangue e le morti”、“Poi ch'ella in sé tornò” の3曲を演奏いたします。マドリガーレ集第3巻は、1592年 モンテヴェルディがマントヴァ公ヴィンチェンツォ1世に雇われた頃、その公爵自身に献呈され出版された作品集です。
 今回演奏する3曲は連作となっており、詩はトルクァート・タッソの叙事詩「エルサレム解放」より、魔女アルミーダが騎士リナルドに見捨てられた後、復讐を誓いつつも、悲しみ弱り、絶望に暮れる場面から取られています。
 曲は 古典的な書法を守りつつも、詩の内容により、時に激しく、時に静かに、言葉に合わせた音型など、後に オペラを作曲するモンテヴェルディの劇的な表現がそこかしこに垣間見えてきます。
 短い作品ではありますが、まだ若い頃のモンテヴェルディの作風を楽しんでいただける事と思います。
(ベース 竹内 幹)

A. ブルックナー     世俗合唱曲集 より
 今年生誕 200周年を迎えたブルックナー。オーストリアで生まれ教会オルガニストとしても活躍し、交響曲や宗教曲の作曲家として知られていますが、本日は、Carus 社の曲集「ブルックナー世俗合唱曲集」から5曲をお届けします。四季の景色の中に佇み思索に耽る詩人の心情が、曲の中で巧みな彩りをもって表現されています。

◇ Du bist wie eine Blume  きみは花のよう 
 ハインリヒ・ハイネの非常に著名な詩で、シューマンやリストをはじめ多くの作曲家が付曲しています。 本曲集は編曲によって混声合唱にされた作品が多くを占めていますが、この曲は原曲のままで収録されています。

◇ Herbstlied         秋の歌   
 原曲は男声合唱とソプラノ独唱2人とピアノ伴奏によります。曲集発刊にあたって混声四部合唱版に編曲されました。

◇ Im April           四月に   
 原曲はブルックナーの教え子であった ヘレーネ・ホフマン Helene Hofmann に献呈されたピアノ伴奏つき歌曲。
エマヌエル・ガイベルは当時のドイツ抒情詩を代表する詩人で、シューマンやブラームス、メンデルスゾーンなど多くの作曲家が付曲しています。詩で読まれているドイツの四月は、天候が非常に変わりやすく、「四月と女心は変わりやすい」との諺があるほど。気まぐれな雨(あるいは雪も)や目まぐるしい寒暖差の中、徐々に冬の終わりから早春へと向かっていく季節です。

◇ Mitternacht         真夜中   
 原曲は男声合唱。混声版でソプラノが div.するところの上声は、オリジナルではテノール独唱になっています。

◇ Träumen und Wachen    夢と目覚め  
 テキストの出典は、19世紀オーストリアの最高の劇作家と評されるフランツ・グリルパルツァーによるメルヘン劇
Der Traum, ein Leben「夢は人生」より。 1834年にウィーンのブルク劇場で初演されて、作家自身が「完璧な成功」と言ったほどの大成功を収め、ウィーンの聴衆のお気に入りとして何十回も上演され続けました。この歌は富と名声を求めて破滅へと歩もうとしている主人公への、愛に満ちた警告となっています。 詩中の各キーワードは、ストーリーの中核を暗示する役割を果たしています。
(ソプラノ 和佐谷 宏子、 ベース 三木 武)
 

藤嶋 美穂     混声合唱組曲 あさきよめ 
 室生犀星(1889-1962)は、金沢出身の詩人、小説家。生後すぐに養子に出され、困窮のため 13歳で勤めに出て働きながら文学を志します。 1913年(明治43年)に初上京し、1918年(大正7年)に詩集「愛の詩集」「抒情小曲集」を刊行し、詩壇での地位を確立します。
 抒情小曲集に収められている「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの」という一節が有名ですが、母の愛を知らず苦労して少年時代を過ごした、雪が舞い緑あふれる故郷・金沢への想いが、犀星の数々の詩から垣間見られるように思います。
 「あさきよめ」とは、「朝清め(浄め)」(=朝の掃除) の意。 作曲者の藤嶋氏は、「生きて生きて生き抜かなければならないことは確かだ。」という一節について、「善悪や成否を超えた力で私たちの背中を押してくれます。それはどんな苦しみの中にあっても「生きていて良いのだ」という「ゆるし」のようにも思えます。」と楽譜前書きで語っています。
5曲からなる本組曲は、ほの暗く寂しい曲調から始まり、徐々に希望を持って進んでいくような構成となっています。
詩の言葉を大切に瑞々しく歌い上げたいと思います。
(ソプラノ 和佐谷 宏子)