演奏会に足をお運び頂きましたことを心から感謝申し上げます。地味な作曲家、クラウディオ・モンテヴェルディの名を冠した合唱団の活動にこれまでにも熱い声援を頂いてきました。長く活動が続いていますことも関心を持っていただけた故のことと、深くお礼を申し上げます。それなしには成し得なかったことだと思っています。
クラウディオ・モンテヴェルディ、地味と書きましたが、しかしながら西洋音楽史上においては偉大な功績を残した作曲家です。簡潔にその音楽の特徴を述べれば、「劇的な感情を音楽化した作曲家」ということになります。それまでの宗教的合唱曲は伝統的に理論化された形式と和声によって響きを綴ってきたのですが、モンテヴェルディは革新的に自らの音楽的信念に従って曲を書きました。オペラの創始者としても知られているのですが、一見相容れない宗教曲と世俗音楽(それもオペラ)の仕切りを取り去ってしまい、そして成功した作曲家です。
業績としては何作かのオペラとそして 大作「聖母マリアの夕べの祈り(晩課)」が知られているのですが、実は彼の音楽にとって重要な曲は「マドリガーレ」です。そこに音楽史の珠玉の作品が生まれ出ています。
今日の曲はその中の一曲です。模倣様式を駆使しながらオペラのアリアの様に劇的要素を映し出します。本来ならばパート一人ずつでの演奏が想定されているのですが、少し苦慮しながらも合唱での演奏でお楽しみ頂こうと思います。 合唱団の腕の見せ所でしょう。
A.ブルックナーは今年メモリアルイヤーとなる作曲家。生誕 200年記念となります。
ブルックナーの作品は早くから私のレパートリーとなっています。交響曲が一般に知られていますが、彼の宗教合唱曲は素晴らしいです。これらは私の心をありのままに受け入れ、そして熱くします。そのような作品は稀です。きっと私と の相性が良いのでしょう。
今日の演奏は宗教曲ではないのですが、作曲家の魅力が溢れている曲たちです。ブルックナー作品への導入の役を果たすのではないかとの思いで選曲しました。彼の作品は難しいというイメージがありますが、少しでも敷居を下げることに繋がれば嬉しく思います。
藤嶋美穂「あさきよめ」は新進の作曲家として紹介しても良いでしょう。氏の作品はそう多くはないですが一曲、一曲が丁寧に作曲され、そして思いも十分に伝わってきます。私にとっては注目の作曲家の一人です。
この「あさきよめ」は氏の代表作といっても良いでしょう。私もこの曲を通じて氏を知ることができました。室生犀星の世界がこのような曲となったことを喜びたいと思います。
合唱団も好きなようです。その思いが今日の演奏にきっと表れると期待しています。
此所、京都文化博物館での演奏はいつも楽しみとなっています。客席との距離が近く、それでいて天井の高さ、木材の空間は音楽を優しく、温かく包んでくれているようでいつも気持ちが豊かになっていくのを感じます。
今日の演奏の時間がお出で下さった皆様にとっても憩いと、充実の時間となりますよう指揮させて頂きます。