第73回 定期演奏会

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モンテヴェルディ連続演奏シリーズ Vol. 73

 


 ◆ C. モンテヴェルディ 4つのモテット
   Christe, adoramus te   キリストよ、あなたを崇めます  (SV 294)
   Domine, ne in furore tuo  主よ、怒って私を責めないで下さい (SV 298) 
   Adramus te, Christe   あなたを崇めます、キリストよ  (SV 289)
   Cantate Domino, canticum novum    主に向かって新しき歌をうたえ  (SV 293)
 
 ◆ 寺嶋 陸也 混声合唱とピアノのための (はながたみ) 
(作歌: 良寛 1. 鉢の子に 2. 今日わかれ 3. 風まじり 4. つきてみよ 5. あは雪の
 
 ◆ 新実 徳英 混声合唱とピアノのための 花に寄せて
(作詩: 星野 富弘 ) T たんぽぽ  U ねこじゃらし  V しおん  W つばき・やぶかんぞう・あさがお
X てっせん・どくだみ  Y みょうが  Z ばら・きく・なずな ─母に捧ぐ─ 
〜アンコール〜 
 ◆ E. ウィテカー  SING GENTLY 
 ◆ 新実 徳英 壁きえた(混声合唱とピアノのための「なぎさ道」より)
 鳥が (川崎洋の詩による五つの混声合唱曲「やさしい魚」より)




指揮
ピアノ
合唱

: 當間 修一
: 木下 亜子
:京都クラウディオ・モンテヴェルディ合唱団

Flyer; the 73rd Concert PDF版ファイルは、こちら( 3.7 MB)


  • 日時 :2024年 3月17日(日)
        開演 … 14時30分(開場 … 14時)

     

  • 会場 :京都西文化会館 ウエスティ《ホール》
     (京都市)西京区役所(西京合同庁舎) 東隣
     −−下方に掲載の、交通の案内をご参照ください−−

- 入場料 -
  《 前売券 》   《 当日券 》 
一般¥2,800 ¥3,000 
学生¥1,800 ¥2,000 
高校生以下¥  800 (前売と同額)


【 最寄りの交通 】

*阪急・嵐山線「上桂駅」より徒歩 約15分
*バス停「西京区役所前」より徒歩 約 2分 … 市バス 29・69系統
*バス停 「千代原口」 より徒歩 約 5分 … 市バス 73系統、京阪京都交通 21・21A・27系統


上桂駅・バス停からの 経路案内(地図・写真)を、ご覧ください。




演奏にあたって   音楽監督・常任指揮者 當間修一 


 演奏会とは、演奏する者にとっても、聴いてくださる方々にとっても、嬉しいこと、素敵な曲との出会いであると思っています。
 往年のものであっても、新作であっても、心を打つ作品ならば新たな感動の日となるに違いありません。

 最近、作品の見直しの時期に来たのではないかと私自身の足跡を感じます。心に残っている作品だが、取り上げてこられなかった作品の再発掘です。
 邦人作品、その一つに新実徳英氏の作品があります。私が活動を始めた頃には氏の作品への愛着がありながらも、その後取り上げる機会がなく今に至っています。氏とお会いしたときには「演奏したいと思っているのですが・・・・、また取り上げますね」との挨拶ばかり。
 気がつけば氏の作品は常に横に置かれ、木下牧子、千原英喜、西村朗(残念なことに2023年9月7日、69歳で逝かれました)、寺嶋陸也氏らの作品を軸にしながら中堅から新人の作品が並びます。
 今回は氏との約束を果たす意味もあって、「花に寄せて」を聴いていただこうと思います。氏の抒情性がいかんなく発揮されている佳作です。(別演奏会には有名な「幼年連祷」を演奏します)

 さて、今回紹介したい邦人曲は寺嶋陸也氏の「花筺(はながたみ) 」、佳い曲です!
 氏の独自の世界、それはシンプルな形(でも決して容易ではない!)。新鮮で、美しく、深く新たな世界へと導いてくれます。練習を重ねるごとにその魅力に取り憑かれる、これ私の本音です。

 クラウディオ・モンテヴェルディの作品の連続演奏も続きます。今回は現在出版されていて入手し易い「4つのモテット」。これまでにもピースとして演奏してきましたが、4つ並んでの演奏は希です。
 クラウディオ・モンテヴェルディの新旧作風の流れが見えます。大曲の間(はざま) にあって存在感のある渋く輝きを放っている、といえましょう。
 「京都クラウディオ・モンテヴェルディ合唱団」が取り組んできた大曲での連続演奏中、このような曲を演奏できることに大きな喜びを感じます。

 新しい世界、心を包むことのできるコンサートになればと願っています。
 今日のご来場、心からお礼を申しあげます。


 曲紹介

C. モンテヴェルディ 「4つのモテット」
 モンテヴェルディ連続演奏シリーズ、今回は“4つのモテット”を演奏いたします。4曲とも1620年にマントヴァの出版業者ビアンキによって出版されたモテット集に収められています。

◇ Christe, adoramus te          (SV 294) キリストよ、あなたを崇めます   
 Tutti でのキリストへの呼びかけから始まります。 半音階進行でのポリフォニーは人の苦しみや悩みを現しています。短く聴きやすい作品です。
◇ Domine, ne in furore tuo        (SV 298) 主よ、怒って私を責めないで下さい 
 書式自体は古い様式ですが、モンテヴェルディの劇的表現がそこかしこに詰まった聴きどころの多い作品です。 最後「主よ、いつまでなのでしょう?」という問いかけを半終止で曲を閉じるのが何とも印象的です。
◇ Adoramus te, Christe          (SV 289) あなたを崇めます、キリストよ   
 1曲目( Christe, adoramus te ) とテキストがかなり似ていますが、こちらの方がより動きを伴った曲となっています。下降系が重なっていくポリフォニーは血が流れる様を現しているのでしょうか。静かですが熱い表現が求められます。
◇ Cantate Domino, canticum novum  (SV 293) 主に向かって新しき歌をうたえ   
 テキストの通り新しい歌を歌おう、と躍動感に溢れた曲です。 シンコペーションの多用、モンテヴェルディの代名詞と言えるような音型、歌えば短いですがモンテヴェルディの楽しみが凝縮されています。 私達の演奏会では、いつも最後にアンコールとして歌わせていただいています。
(ベース 竹内 幹)

寺嶋 陸也  混声合唱とピアノのための 花筺 (はながたみ)
 初演は 2012年8月。「東日本大震災とそれに続く原発事故のあと、私たちにつきつけられた「生きる」ことの意味や、「どのように」生きていくべきなのか、ということを考えたとき、良寛の生きかたや、その作品に表されている世界観に心を打たれ、」作曲されました。「花筺」とは、目の細かい花籠のこと。「この曲集自体が、花を集めたお供えのようなものでありたい」とタイトルをつけられたそうです。(楽譜前書きより)
 良寛禅師は宝暦8(1858)年、佐渡と本州を結ぶ重要な港町であり、北陸道の宿場町として賑わっていた越後国(新潟県)出雲崎の名主の家に七人きょうだいの長男として生まれます。世は大火や地震、不作による飢饉、米騒動などの続いた頃でもありました。
 74年の生涯で、現在に残っている作品だけでも漢詩約50首、和歌約1,400首。書簡や、戒語(自分の行動を戒めるためのメモ書きのようなもの)など誰かに何かを伝えたり発信したりしようと思って書かれたものではないものも多く残されています。その多さは、風流も嗜みながら、愚痴や悲しみもありのまま言葉に表し、文字として書くことで自分の内面の心の動きを確認し、己の愚かさ、汚さに気づくことも修行のひとつと考えられていたこともあるかと思われます。
 己の存在をもって...姿を見たり、言葉を交わしたりすることで人に気づきを与える求道者としての生き様や言葉は今も生き続けているようです。
 あたたかさ、穏やかさ、柔らかさ、安らぎ、ほほえましさ。冷たさ、やるせなさ、きびしさ、寂寞。形式や立場に拘らず、虚飾や虚栄を削ぎ落し、ありのままの姿や心を表現した水墨画のような詩と曲を、たいせつに花を捧げるように、心からの音楽をお届けできますと幸いです。

新実 徳英  混声合唱とピアノのための 花に寄せて
 本作品は、星野富弘さんの詩画集『風の旅』に収められた12の花に添えられた詩をテキストとしています。
 体育教師だった星野さんは、器械体操のクラブ活動指導中に事故で首から下の自由を失い、入院中に口に筆をくわえて文や絵をかき始めます。
 繊細な色づかいで描かれた道端の木の花、草の花は、瑞々しい躍動感のある生命力に溢れています。踊るような温かみのある文字で添えられた詩は、花と対峙した時の素直な感動と、花の佇まいを自分や人間に重ねた想いが綴られています。
 自分では動けないけれど、根を張り、芽ぶき、蕾を膨らませ、花を開き実を結び、どこか遠くへ希望を込めて種を飛ばす。花や木を「友達のように思っている」星野さんの詩画を通して、生きることの素晴らしさと、周りの人々への感謝を私たちに気づかせてくれるような気がします。
 新実徳英さんが「作者の心に沿ってできるだけ素直に自然に作曲した (組曲前書きより) 」7曲は、親しみやすいメロディの所々にハッとするような遊び心が差し込まれています。詩画に描かれた花々の生き生きとした姿、温かな想いをお伝えできれば嬉しく思います。
(ソプラノ 和佐谷 宏子)