第69回 定期演奏会

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  モンテヴェルディ連続演奏シリーズ Vol. 69

 


  ◆ C. モンテヴェルディ マドリガル集 より
 《第2巻 より  Dolcissimi legami  この上なく甘い結い縄
 《第2巻 より  Bevea Fillide mia  僕のフィッリデは呑んでいた
 《第4巻 より  Ohimè, se tanto amate   ああ、もしそんなにお好みなら 
 《第3巻 より  O primavera  おお、春よ
 
 
 ◆  千原 英喜 混声合唱とピアノのための組曲『南の絵本』
( 詩:岸田 衿子) 1. だれも いそがない村、  2. 南の絵本 
3. アランブラ宮の壁の、 4. 冬の旅、 5. てがみ
 
 
 ◆  寺嶋 陸也 『星への距離』混声合唱とピアノのための
( 詩:紫野 京子) 1. 霧の馬、 2. 山河、 3. 空の向こうで、 4. 魂の奥底で
 
  〜 ア ン コ ー ル 〜
 ◇   千原 英喜
◇ C. モンテヴェルディ
 
  「光のなかの貨物列車よ」より〈5〉
  Cantate Domino, canticum novum
 


◇ 指揮
◇ピアノ
◇ 合唱

: 当間 修一
: 木下 亜子
:京都クラウディオ・モンテヴェルディ合唱団

Flyer; the 69th Concert 【PDF版ファイルも、ご利用いただけます】
( 950 kB )


  • 日時: 2022年 3月 27日(日)
          開演… 15時(開場 … 14時30分)

     
  • 会場:京都文化博物館 別館ホール  京都市営地下鉄「烏丸御池」駅から 徒歩 約3分 
- 入場料 -
  《 前売券 》   《 当日券 》 
一般¥2,800 ¥3,000 
学生¥1,800 ¥2,000 
高校生以下¥  800 (前売と同額)




演奏にあたって     音楽監督・常任指揮者 当間修一 

世界は血なまぐさい争いを止めることが出来ないでいます。人類の歴史上絶えることなく続いています。
それが国が絡んでの戦争であったり、人間の諍(いさか)いの末であったり、子どもたちの間でも起こります。どうして人間と人間が傷つけ合ってしまうのでしょうか?
生物間は勿論、全ての自然界で起こっている「命の循環」とは残酷な面も確かに有って、その残酷さを見せつけられてしまいます。
しかし、人間が人間の命を絶つことを当然とする思考は絶対に有ってはなりません。それはこの地球から人類を絶やすことになるからです。 この美しい地球に人類は存在しなくなるのです。人類が人類を滅ぼす!なんという愚行。それは人類の進化、発展(知恵を培ってきた歴史)において決して有ってはならないことです。 奇跡としか言いようのない人類の存在。マクロ(巨視的)にもミクロ(微視的)としても摩訶不思議、感動の連続です。人類が生みだした世界の何と言う美しさであることか!
演奏する、ということはこの感動をその場に居あわせている皆さんと味わうことだと私は思っています。一番平和的にです。一期一会の世界だとも思っています。 やり直しが効かない、その瞬間を感じ取れる人間の感 覚。一人一人(人生)の心の動き、瞬間を刻みます。
今回の選曲は「人間の素晴らしさ」をより味わいたいとの思いで選びました。
イタリアにおいて新しい音楽時代の扉を開いたクラウディオ・モンテヴェルディのマドリガル、当時の人々が魅了された「人間賛歌」です。 千原英喜ワールド、散文の世界。そのメルヘンが最初は女声合唱として作曲 され、後に混声合唱に編成し直された曲。この混声版はその類で成功した曲だと私は思います。 それぞれ の曲の「おとぎ話」を人間ならではのイメージで彩りたいと思いました。
さて、寺嶋陸也氏の「星への距離」。氏から頂いた未出版の楽譜から選びました。2017年11月に書かれたこの曲が何と、現代と相応することか!
ウクライナで起こっている戦禍、正にそれは人間の愚かさ、残忍性を覗かせて世界を恐怖へと駆り立ててい ます。軽んじられる生命!
11 年前に起こった大惨事(津波・原発)は今以て解決されてはいません。歴史を辿ってみる理不尽さ、それ は今も続いています。
演奏会を開催されることの喜びを感じています。自然の猛威(「新型コロナウィルス」)は人類に課せられた必然的災害とも言えるでしょう。 しかし、殺戮を繰り返す人間の愚かさ、残忍性が現れる戦争は「人間が起こし、回避もできる大災害」です。
地球の歴史上最も危惧されるこの時、開催することができる演奏会に心からの感謝です。沢山の方々の協力の下での演奏会です。
災害の終息を、そして平安を!
それを祈って、「人間って素晴らしい!」と、渾身の棒を振りたいと思います。
 

曲 紹 介

§ C. モンテヴェルディ 「マドリガル集」より
モンテヴェルディ連続演奏シリーズ、今回はマドリガーレから小品4曲を演奏いたします。

◇ Dolcissimi legami    この上なく甘い結い縄
マドリガーレ集第2巻より。 甘い縄(罠)に捕われた女性の妄想でしょうか。もちろんそのこの上なく甘い縄に捕らえられる事を 彼女は望んでいます。縄の中で戯れるようなリズムが聞きどころ。シンプルな構成の中にも、しっとりとした情熱が感じられる曲です。

◇ Bevea Fillide mia     僕のフィッリデは呑んでいた
マドリガーレ集第2巻より。 女性とお酒を飲んで、間接キスになって、それだけでこれっていけるんじゃない? と思う男性の歌。歌詞の内容は無いにも等しいですが(笑)、曲は3拍子から始まり、ポリフォニックな所も多く、アンサンブルが なかなかに難しいです。生真面目にならないよう、明るく楽しく歌えればと思います。

◇ Ohimè, se tanto amate  ああ、もしそんなにお好みなら
マドリガーレ集第4巻より。 “何千もの甘い「ああ」”を、そのまま“Ohimè”を何十回も繰り返しているところが何とも印象的な曲。 第4巻らしく、言葉の内容による曲調の変化が巧妙です。

◇ O primavera        おお、春よ
マドリガーレ集第3巻より。 モンテヴェルディで春と言えばこの曲です。 テノールが高らかに春の喜びを歌い上げて始まりますが、途中からは “春なのに...”となって、戻ってこないものに思い馳せる歌となっています。何度も演奏している曲ですが、また新しい春をお届けしたく思います。

(ベース 竹内 幹)

§ 千原 英喜  「南の絵本」
2015年女声合唱作品初演後の2018年に初演の混声合唱版を演奏いたします。
5篇の詩は詞華集『いそがなくてもいいんだよ』から。
これは1995年、詩人が66歳のときに4つの詩集と同人誌から選ばれた49篇で新たに編まれたものです。
組曲のタイトルでもある『南の絵本』からはじまり、『てがみ』でとじられます。
画家を志していた詩人が浅間山麓の豊かな自然と光と風の中
心を自由に遊ばせ旅立たせて紡いだ美しいやさしいことばたち。
「岸田衿子さんのメルヘンチックな詩の世界に私のちょっと気ままなイメージを重ねて作曲しました。」 (楽譜 「はじめに」より)
この「絵本」の世界との出会いで広がる「千原ワールド」の風景をお楽しみいただけますと幸いです。
(アルト 吐月 美貴)

§ 寺嶋 陸也  「星への距離」
今回演奏します「星への距離」は、2017 年 11 月に作曲されました(未出版)。
詩人は神戸在住とのことで、阪神淡路大震災の鎮魂の詩も書かれています。この作品では、原発事故に始まる福島の惨害と人々の苦しみを、 時に鋭く、また共感に満ちて描かれています。 2011年3月に未曽有の原発事故が発生してから既に11年が経ちました。あれほどの 破滅的な災害を経験しながら、原発が無くなるどころか当たり前のように再稼働に向けて進んでいるこの国の姿。そしてまさにこの3月、再び 核が使われようとし、原発に軍事攻撃が行われている現実。この曲に歌われたことは過去の出来事ではなく、今もなお 私たちを取り巻いているのだと、歌うたびに感じます。そして、どんなに絶望するような状況でも、たとえ小さくとも 必ず希望はあるのだと、この歌を通して皆さんと確かめ合えればと思います。
1. 霧の馬
白い霧の中に佇む馬の姿。まるで象徴詩のように暗示的な描写で曲は始まります。
霧の中の馬とは、私たちにとって何なのでしょうか。
分からぬままに眩い輝きに魅せられてしまった私たち人間。
輝かしい世界どころか薄暗い霧の中で後悔の涙に暮れる私たち。
2. 山河
山や川、自然はいつでも私たちを育み、守ってくれたのに、私たち人間は取り返しのつかないほどに
それらを破壊してしまったのでした。喪われた魂たちは、今日も叫びます。
子どもたちを、動物たちを、大地を、山河を返せと。
3. 空の向こうで
街が失われ、人が失われ、多くのものが失われました。
亡くなった人たちは空の向こう、星の彼方で微笑んでいる。
あの人たちにはもう会うことができない。生きている限り続くその痛み。
4. 魂の奥底で
急にいなくなってしまったあなたを思い続けて、そうしてある日気付くのです。
もう会えないけれど、思い続けている限り心の中にあなたはいるのだと──
やがて暖かい光に包まれ、曲は静かに閉じられます。
長い長い時間を、遥かな距離を感じさせながら。
(テノール 笹川 馨)



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