演奏曲目紹介
◆ C.モンテヴェルディ/ Sestina(六行六連詩) -愛する女の墓に流す恋人の涙-
モンテヴェルディ連続演奏シリーズ、今回はマドリガーレ集6巻よりSestinaを演奏いたします。Sestinaとは6連詩のことで、6行6連の詩をそのまま6部構成で書かれたマドリガーレです。
「愛する女の墓に流す恋人の涙」と訳された通り、亡くなった恋人に対する思いが切々と語られます。モンテヴェルディが寵愛した若い女性歌手の死を悼んで書かれた曲であり、そのモンテヴェルディの想いを投影した男の情熱、悲哀が静かに美しく描かれています。そしてその悲しみ・涙が、最後には祈りへと昇華していきます。
派手さはなく、テクニックと表現力が必要なため、なかなか演奏される事のない曲ですが、数あるマドリガーレの中でも屈指の名曲です。
(ベース 竹内 幹)
◆ J.ブラームス / Im Herbst -秋に-
作曲者のブラームス(1833〜1897)は交響曲やドイツ・レクイエムなど大作も有名ですが味わいのある無伴奏合唱作品も多数残しています。今回演奏する”Im Herbst”(「秋に」)は、彼がウィーンに住んでいた1888年に作曲された無伴奏合唱曲集「五つの歌」(Op.104)の終曲です。
詩が描き出す秋の情景には抜けるような青空も紅葉に彩られた山々も出てはきません。陽は霧に覆われてうす寒く、葉を落とした裸の木の上を葬列のような鳥が渡ってゆく。真冬かと見紛うような静まり返った厳しく陰鬱な野辺の情景です。しかしこの詩に付された音楽の何と豊かなことか。短い曲の中で幾度も転調を繰り返すハーモニー。息長くたゆみなく進んでゆくフレーズ。そして落日の最後の輝きとともにじわじわと広がる喜び。ブラームス小品の味わい深さを感じていただければと思います。
(テノール 笹川 馨)
◆ 清水 脩 / 秋のピエロ
明治から昭和にかけての詩人、歌人、フランス文学者である堀口大学の詩集「月光とピエロ」から選んだ詩をテキストとして作曲されたもので、第1回全日本合唱コンクール(1948年)の課題曲となっています。 70年の間、男声合唱の定番として親しまれ、愛唱されてきた作品です。細やかな“泣き笑いの機微”を、ぜひ表現してみたいと思います。
(テノール 西台 元、ソプラノ 和佐谷 宏子)
◆ 小林 秀雄 / 落葉松
1972年に独唱曲として作曲され、1976年に女声合唱に、その後混声版、男声版、ピアノ曲にも編曲されています。本作を含む4曲を収めた合唱曲集「落葉松」として出版され、広く演奏され続けています。
詩の風景は軽井沢の高原。黄金色に色づいた落葉松(からまつ)林に降る雨。
中間部の曲の盛り上がりに合わせ、4声のオブリガートが彩りを添えます。
(ソプラノ 和佐谷宏子)
◆ 木下 牧子 / 秋 風
作曲者の木下牧子氏が大学在学中に初めて作曲された混声合唱曲で、その後多数生み出された合唱作品の「原点」になった作品、と氏も楽譜の後書きで語られています。 後に合唱曲集「夢みたものは」出版時にアカペラにも編曲されていますが、本日の演奏は、元曲のピアノ伴奏版となります。
水面に映る秋の三日月。その影の揺らぎに観える風の渡り。そういった情景を、繊細なタッチの小品でお楽しみください。
(テノール 西台 元、ソプラノ 和佐谷 宏子)
◆ 信長 貴富 / 混声合唱とピアノのための 初心のうた
第1曲目「初心のうた」は2001年に中学生向けの混声三部版として作曲されましたが、その後作曲者が「アジアの中の日本の在り方が問われる局面に日々接することになり」、「今何を書くべきかという問いに対峙し」(前書きより)、混声四部として書き改められ、新たに4曲を加えられた曲集として2003年に出版されました。
ときに強烈な社会批判も込められている木島始の詩に、美しい旋律や印象的なユニゾンが用いられ、全編にわたって未来へと向かおうとする力強い意志と願いが表現されています。各曲を象徴的に彩り合唱を導いてくれるピアノと共に、希望に満ちた音楽をお届けできればと思います。
(ソプラノ 雲財 知)