◆ W. バード / Haec Dies a 6 《この日こそ、主が創り給うた日》
作曲者のウイリアム・バードはヘンリー8世やエリザベス1世で知られる英国テューダー朝期に活躍したオルガニストであり音楽家です。
英国国教会のために英語による典礼音楽を作りましたが自身カトリック教徒であった彼はラテン語によるミサ曲やモテットの傑作を多数残しています。
Haec dies は歌詞を聖書の詩篇118番から取っており復活祭のミサでも歌われるテクストです。曲調は明るく溌溂としてあたかも世俗曲を思わせます。
軽やかなフレーズからダンスのような3拍子へと流れるように展開し多くのパートの賛美の「アレルヤ!」が次々に重なって曲を盛り上げます。
喜びが満ち溢れるなかにも英国らしい気品の漂う楽しい小曲です。
(文責:笹川 馨)
◆ C. モンテヴェルディ/ Laetatus sum a 5 《私は喜んだ》
この曲は1650年に出版された「ミサと詩篇集」に所収されています。
厳格なポリフォニー様式に則って作曲されていますが、モンテヴェルディらしい快活なリズムで躍動感のある生き生きとした曲となっています。
冒頭から畳み掛けるようなポリフォニーでの言葉の連なりが詠唱の直前まで続き、「あなたに善き事がありますように」という箇所で
初めて5声が一つになり、詠唱はホモフォニックに歌われます。最後は曲冒頭のテーマと様式で曲は閉じられます。
5声の合唱と通奏低音の編成ですが、今回は合唱のみで演奏いたします。
小編成ながら喜びに満ちたこの作品、お楽しみいただければと思います。
(文責:竹内 幹)
◆ O. イェイロ / Ubi Caritas 《慈しみと愛のあるところ》
ノルウェー出身で現在はニューヨークで活動をしている作曲家・ピアニスト、Ola Gjeilo(1978〜)により
2001年に書かれた作品です。
ミサの中で歌われ続けてきたグレゴリオ聖歌に影響を受けつつも作品自体は独自のもので、透明感のある美しい旋律と、温かく
包み込むようなハーモニーによって愛にあふれたこの詩が表現されています。
伝統を踏まえながら現代を生きる作曲家によって描かれた作品の魅力を感じていただければ幸いです。
(文責:葛葉 英子)
◆ 千原 英喜 / 女声合唱とピアノのための レクイエム第2番
本作品は、阪神淡路大震災と東日本大震災への祈念として作曲された『レクイエム・光のなかの貨物列車よ』から、ラテン語による5曲を
取り出したものです。
作曲者の千原英喜氏は、各曲について以下のように記されています。
Requiem aeternam ― 追悼の鐘の音。
Kyrie ― 主題に付随する哀しみの下降モティーフ。
Lacrimosa ― 5つの音によるスピリチュアル。
Agnus Dei ― 上行するモティーフは希求する心。
Lux aeterna ― 萌え出る新芽に射す光、そよ風。
死者が天国に導かれ、迎え入れられることを祈る「レクイエム」。
すべての命への追悼と祈りを込めて演奏したいと思います。
(文責:和佐谷 宏子)
◆ 平田あゆみ / 混声合唱組曲 エレメント
混声合唱組曲「水と光と火を」に「地」と「木」を加え作られたものが「エレメント」です。
宇宙空間を取り払っても存在する「水」「光」「地」「火」、そして生命としての「木」。私たちの身の回りに存在する
それぞれの元素を題材に心に訴えかけるような詩の世界と、静かに、時にはリズミカルなメロディーで詩の世界を彩るピアノとの重なり合いが広がります。
元素としてのその存在に感謝を、また反対に畏れを抱くかもしれません。
しかし、それは遠いものではなく、私たちのそばにいつもあるものなのだと改めて感じさせる言葉の力があります。
綴られる詩と曲の世界を楽しんで頂けたらと思います。
(文責:西台 倫子)