「Quam pulchri sunt」
この曲のテキストは聖書の「雅歌」第7章から取られています。
「雅歌」は男女の愛の交歓を描き賛美する内容でかなり直接的な性愛の表現も含んでいます。教会の中では長い間聖書に相応しいかどうか様々な議論が交わされてきました。「聖書に収めるには相応しくない」「いや神と人間の愛を男女の愛にたとえたものだ」「いやいや教会と信徒との愛だ」といった具合に。
ビクトリアの音楽を聴くとそんなしかめ面の小難しい議論などどうでもよく思えます。
愛する女性を誉め心から賛美し続ける一途な心。曲調は春の日差しが注ぎそよ風が吹くようにどこまでも柔らかく優美です。
みなさまの心が愛と優しさでいっぱいになりますように。
(笹川 馨)
「アリアンナの嘆き」
「オペラ」のジャンルを確立したモンテヴェルディ。その2作目に発表された“アリアンナ”は残念ながら楽譜が失われ、今は上演が叶いません。ただ、作中のアリアを作曲者自身がマドリガーレに編曲して絶大な人気を博し、名曲として世に残りました。
アリアンナとテゼオ。馴染みのある呼び名では、アテナイの王子・テセウスと、クレタの王女・アリアドネ。ギリシャ神話「ミノタウロス伝説」です。
ミノタウロスを討つためクレタに向かうテゼオ。彼に出会い、恋に落ちたアリアンナは、迷宮へ赴くテゼオに剣と糸玉を密かに渡し、手助けします。その後、2人はアテナイへ向かうのですが…なんと途中のナクソス島で、アリアンナは置き去りにされてしまいます。
この場面が『アリアンナの嘆き』です。
悲痛な思い“いっそ死なせて…”から始まり、消せない恋慕、怒り、望郷。様々な激情に翻弄される彼女の独白を綴ります。
揺れ動く彼女の心をお伝えできればと思います。
(西台 元)