第56回 定期演奏会

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【後援】京都府・京都市・公益財団法人日本イタリア会館 
 
第56回定期演奏会のご案内をさせていただきます。 今回のプログラムは、四〜五百年の時を経てなお色あせることの無い ルネサンス作品に始まります。 続いて、バロック音楽への扉を開いた私たちの敬愛するモンテヴェルディの作品。 日本の“ことばとこころ”を伝えたい邦人作品。 そして当時の天災飢饉に立ち向かった宮澤賢治の心象がつづられたテキストに、様々な音の魅力がちりばめられた千原作品への挑戦。 これらの作品の魅力に迫った演奏を目指して、日々練習を重ねております。
一方そのあい間に、また大きな災害の報を知りました。熊本・大分の地震で被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。 今まさに困難に向き合う方々がいらっしゃる事を心に刻み、私たちは一生懸命、祈りを持って音楽を発信したいと思っております。 皆様のご来場を団員一同お待ちいたします。
なお、演奏会当日、会場受付に災害支援の募金箱を準備いたします。 ご来場の皆様からも、可能な範囲でご協力をいただけましたら幸いに存じます。 お預かりしたお志は、合唱団内の拠出と合わせて、被害の集中する 熊本県にお届けしようと思います。どうぞよろしくお願いいたします。


 

【第1ステージ】 〜ルネサンス 愉悦の名曲〜
 ◆  J. デ・プレ
◆  O. di ラッソ
◆ T.L. de ビクトリア
 

Ave Maria   
 Tristis est anima mea 
Ave Maria a 8  
【第2ステージ】 〜モンテヴェルディ 連続演奏シリーズ Vol.56 〜
 ◆C. モンテヴェルディ
 

Maginficat a 6 vo.
(6声のマニフィカト)
【第3ステージ】 〜合唱団が選ぶ合唱曲〜
 ◆   萩 京 子
◆  岩 河 三 郎
◆ 瑞慶覧 尚子
◆ なかにしあかね

種  子
こ き り こ
谷 茶 前
今日もひとつ
【第4ステージ】
 ◆  千 原 英 喜
 
混声合唱とピアノのための組曲 
わたくしという現象は
《 アンコール 》
 ◆C. モンテヴェルディ
 

 Cantate Domino canticum novum


  • 指 揮:   当 間 修 一
  • 伴 奏:   木 下 亜 子 (ピアノ・オルガン)
  • 合 唱: 京都クラウディオ・モンテヴェルディ合唱団

  • 日 時:  2016年 6月11日(土)
            開演 … 18時 00分
           (開場 … 17時 30分)

  • 会 場: 【 京都府立府民ホール  A L T I  】
    −京都市営地下鉄(烏丸線)「今出川」駅 出口6から南へ徒歩 5分

  • 入場料:      (前売)  (当日)
    •  一 般  ¥3,000 / ¥3,200
    •  学 生  ¥2,000 / ¥2,200
    • 高校生以下 ¥  800 / ¥1,000

Flyer; the 53rd Concert
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( PDF , 1.6 MB )



◇・- ◇・- ◇・- 演奏にあたって -・◇ -・◇ -・◇
 

ようこそお出で下さいました。
今回から各ステージにこの合唱団のコンセプトに依った選曲をと、組みました。

先ずは第一ステージ。合唱の基本であるルネサンス時代の名曲を聴いていただきたいと、宗教曲、世俗曲から選ばれる「愉悦」の名曲を集め、シリーズ化するものです。
「ルネサンス 愉悦の名曲」と題します。

1)ジョスカン・デ・プレ(Josquin des Prez)
 (1450 /1455?-1521)
アヴェ・マリア「Ave Maria」
盛期ルネサンス音楽の頂点を示す彼の後期の作品。同時代の多くの人々から最高級の賛辞が与えられた模範的作品と評された名曲です。

2)オルランド・ディ・ラッソ(Orlando di Lasso)
 (1532-1594)
16世紀末のヨーロッパで最も有名で影響力のあった作曲家。
モテット「私の魂は死ぬほどに悲しい (Tristis est anima mea)
イエスが捕らえられる直前の思いを弟子たちに語った、その言葉を綴った曲。深い悲しみが伝わってくる名曲であると私は思っています。

3)トマス・ルイス・デ・ビクトリア(Tomás Luis de Victoria)
 (1548-1611)
八声のアヴェ・マリア「Ave Maria a 8」
スペインが生んだルネサンス期最大の作曲家。20世紀にその音楽が見直され復活。神秘的、劇的な音楽は多くのファンを魅了しています。

第二ステージ
モンテヴェルディ連続演奏の一環とするステージ。これまで主としてマドリガーレを演奏してきましたが、今回は最高傑作である1610年の「聖母マリアの夕べの祈り」に付随するマニフィカトの縮小版である「6声のマニフィカト」を演奏します。
合唱団全体の調和・協和が試されるのですが、その上、ソロやソリによる個人の力量も問われます。 名曲であるというだけでなく、合唱団にとっても個人のメンバーにとっても重要なレパートリーとして確立しています。

第三ステージ「合唱団が選ぶ合唱曲」
新しく企画されたステージです。団員が歌いたい曲を選びました。往年の曲もありでしょう。今日の曲もあるでしょう。合唱の歴史ともなればと思っています。
今回、団員が選んだ曲は以下のものです。
 1)萩 京子「種子」
 2)岩河三郎「こきりこ」
 3)瑞慶覧尚子「谷茶前(たんちゃめ)
 4)なかにしあかね「今日もひとつ」
 5)木下牧子「はじまり」

毎回最終ステージの曲は私が選びます。合唱団にとって更なる実力向上へと向かう曲でありたいと願いますし、合唱界にとっても魅力溢れるものである、そういった曲を選びたいと思っています。今回は千原英喜作品です。

第四ステージ 千原英喜「わたくしという現象は」
(以下の文章は昨年2015/05/24(日)、東京浜離宮朝日ホールでの大阪ハインリッヒ・シュッツ室内合唱団【第19回東京定期公演】「演奏にあたって」から一部変更して転載するものです)

宮澤賢治は37歳でこの世を去りました(今年は没後83年)。現在でも、多くの人々が賢治自身が言う「修羅」(仏法を守護する八神のひとり阿修羅。常に戦い続ける戦闘神であり、また苦しみもだえる状態を指す言葉でもある)のごとき凄まじい生涯を送った偉大な詩人だと彼を偲んで語ります。
若くして亡くなった賢治の世界は多元的。科学者、地質学者、はたまた実践する農夫であり教育家。そしてその時代に於ける先駆的音楽愛好家でもありました。それらを支えた強い想いの根源は、熱狂的な宗教的情熱と、未来を夢見る夢想家である多面的に交錯する彼のヒューマニスティックな世界だったと思われます。彼の生き方は彼を取り囲んでいた環境に大きく影響を受けてのこと、それは災害・貧困に苦しむ郷里岩手と自身の裕福な家庭環境とのはざまで悩み苦しむ心の軋轢でした。
 
賢治の無二の親友が後に語っている。「とにかく彼は、物質の世界、有限なものの世界から逃れようとした人でした。終生、形あるものを掴んだり、重さのあるものを持ったりすることを非常に嫌っていた。つまり物を所有することを非常に恥だと思った。物は皆のもの、だから彼は無限というものを求めた」。彼の作品から湧き上がってくる強さ、優しさ、希求心といったことはこの想いから来るのでしょうか。
 
彼が観る自然世界。彼が観る人間。彼が観るあらゆるこの世の世界、そして銀河系のこの宇宙。
彼の難解とも映る詩にはそうしたものが作品の背景となって豊かに反映されている。賢治の内面、それは真に「宇宙的」な広がりを持つものであり、まさしく全てのものを内包する「宇宙」そのものである、と言えます。
 
その世界に魅了され「宮沢賢治」を振りたいと思い続けてきました。賢治の心に映った時間的に移ろうイメージ、想い。「心象スケッチ」と名付けられたその世界に惹かれ、自身を重ねながら表現したいと思い続けてきました。
 
千原英喜氏の作品が進化しています。長きにわたって演奏をしてきた者としてこの変化は嬉しくもありまた誇らしくもあります。氏の世界もまた、氏の想いを深め、高め、氏の宇宙を指し示さんとする軌跡です。
振っていて楽しい!賢治さんもきっと宇宙の遙か遠い世界にあって地球を眺め、微笑みながら聴き、温かい眼差しで眺めていらっしゃることでしょう。そう確信するものです。
宇宙と交信し得た賢治さんが羨ましい。その賢治さんの「心象スケッチ」を音楽化する千原英喜氏が眩しい。
 
混声合唱曲「わたくしという現象は」は詩集「春と修羅」の『序』が取り上げられた。この有名な詩をテキストにして多くの作曲家が作品を書いている。しかし、このように歌われ、語られることに私はこれまでにない驚きを持つ。2曲目の未刊の遺作口語詩「生徒諸君に寄せる」といい、3曲目(終曲)の短歌といい、こんなにも賢治の心の世界を描ききった(私の心を掻き立て、捕らえた)作品に無類の深い共感と感動を覚える。賢治のハッシとした熱き想いと彼の苦悩を得て放たれる強く優しきメッセージを体現したいと、渾身の棒を振ってみようと思っています。

今回の演奏がお出で下さった皆様に取りましても合唱の楽しさと魅力を味わって頂けるものになりますように。そして今後も発展していくだろうこの合唱団と、メンバー一人一人にとっても価値あるものになればと願ってやみません。

指揮・音楽監督 当 間 修 一


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