C.モンテヴェルディ「マドリガル集」第3巻 《 対訳 》

'La giovinetta pianta' 
La giovinetta pianta
Si fa più bell'al sole,
Quando men arder suole.

Ma se fin dentro sente
Il vivo raggio ardente,
Dimostran fuor le scolorite spoglie
L'intern'ardor che la radice accoglie.

Cosi la Verginella
Amando si fa bella,
Quand'Amor la lusinga e non l'offende.

Ma se 'l suo vivo ardore
La penetra nel core,
Dimostra la sembianza impallidita
Ch'ardente è la radice de la vita.

(anonimo)
「若い草木は」
若い草木は、太陽を浴びて
すくすくと美しく育ちます、
あまり陽に焼かれすぎないうちは。

でも、いつたん焼けつくような激しい日射しが
体の奥深くまで届いたら、
生気を失つたその茎や葉を見れば
根から全身に回つた熱がありありとわかるものです。

若い娘というのも、まことにこんな具合、
恋をしてますます美しくなるのです、
愛の神が、娘をひどい目にもあわせず、ちやほやしているうちは。

しかしひとたび、恋のほんとうの激しい情熱が
娘の心に忍び込んだが最後、
蒼白になつたその顔を見るだけで、その胸の奥では
命の根が焼かれているのがありありとわかつてしまうのです。

(作者不詳)
第32回 定演
'Occhi un tempo mia vita'
Occhi un tempo mia vita;
Occhi, di questo cor fido sostegno,
Voi mi negat'ahimè, l'usata aita?
Tempo è ben di morire; A che più tardo?
A che torcete il guardo?
Forse per non mirar come v'adoro?
Mirate almen ch'io moro.

(Giovanni Battista Guarini)
「かつてぼくの命だった瞳よ」
瞳よ、かつてのぼくの命。
瞳よ、ぼくのこの忠実な心をかつて支えたもの。
おまえはいまやそつぽをむき、ああ、あのなつかしい安堵すら与えまいとするのか!
もはや死ぬ時がきた。どうしてためらいなどするものか。
おまえはどうして視線をそむけるのだ。
ぼくがおまえを賛美するのを見まいとしてなのだとしたら、
せめていま、ぼくが死ぬのを見るがいい。

(ジョヴァンニ・バッティスタ・グヮリーニ)
第32回 定演
'Perfidissimo volto'
Perfidissimo volto,
Ben l'usata bellezz'in te si vede,
Ma non l'usata fede.
Già mi parevi dir: "quest'amorose
Luci che dolcemente
Rivolgo a te, sì belle e sì pietose,
Prima vedrai tu spente
Che sia spento il desio ch'a te le gira."
Ahi,ch' è spent'il desio,
Ma non è spento quel per cui sospira
L'abandonato core.
O volto troppo vago e troppo rio,
Perchè se perdi amore
Non perdi ancor vaghezza,
O non hai pari a la beltà fermezza?

(Giovanni Battista Guarini) 
「このうえなく不実な顔」
その顔はこのうえなく不実な顔。
かつての美しさはそのままだが、
かつての誠意はどこにも見あたらない。
その顔は、かつてはぼくにこう告げているかに見えたものだ、
「この輝く瞳をごらんなさい、あなたにやさしく向けられる
こんなにも美しく情け深い、愛に燃えたふたつの瞳。
この瞳をあなたに向けたいという願いが消えてしまうくらいなら、それより先に
この瞳のきらめきが消えているのを、あなたは見つけるでしよう」と。
だがいまや、ああ、現にその願いは消えているのに、
わたしの見捨てられた心にため息をつかせている
その瞳の輝きのほうはいつこうに消えてはいない。
ああ、あまりに美しすぎる顔、そしてあまりに実意のない顔よ、
愛は去つたのに、どうして
美しさはまだ去らないのか。
どうしておまえの美しさと同じだけ、愛情も持続しないのか。

(ジョヴァンニ・バッティスタ・グヮリーニ)
第32回 定演
'Stracciami pur il core'
Stracciami pur il core;
Ragion è ben, ingrato,
Che se t'ho tropp'amato
Porti la pena del commess'errore.
Ma perchè stracci fai de la mia fede?
Che colp'ha l'innocente?
Se la mia fiamm'ardente
Non merita mercede,
Ah,non la mert'il mio fedel servire?
Ma straccia pur,crudele:
Non può morir d'amor alma fedele.
Sorgerà nel morir quasi fenice
La fede mia più bell'e più felice.

(Giovanni Battista Guarini) 
「この心を引き裂くがいい」
どうぞ存分に、そうやつてわたしの心を引き裂くがいいわ。
情け知らずの男、あなたにはそうしてよい理由があるのだから。
わたしがあなたを愛しすぎたこと、それが罪ならば、
その過ちに罰を与えるのは、あなたの役目でしようとも。
けれど、心ばかりでなく、わたしの忠誠まで引き裂くのはどうして?
罪を犯していない忠誠にまで、いつたいなんの罰を与えるの?
たとえわたしの燃えあがる恋の炎が
それにふさわしく報われることなどないとしても、
ああ、わたしのこの無私の真心まで報いられないというの?
ーーいえ、やつぱり引き裂きなさい、残忍な男。
忠実な魂こそは、愛のために死ぬことはできません。
わたしの忠誠は、不死鳥のごとく、いつそう美しく、また喜びにあふれて
死の底からよみがえつてくるのですから。

(ジョヴァンニ・バッティスタ・グヮリーニ)
第32回 定演
 イタリア語指導・翻訳 :  大木 正 
京都クラウディオ・モンテヴェルディ合唱団
©2004-, T. Ohki / Claudio Monteverdi Choir, KYOTO; All Rights Reserved


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